閉じる 閉じる
お気に入りに追加しました

不動産投資の法人化とは?税金・融資・相続のメリットと注意点

 

不動産投資で物件が増えると、税負担、追加融資、将来の承継を検討する場面があります。

法人化の有利・不利は、所得、物件、借入、家族構成などで異なります。

「法人化」は検討できる選択肢の一つです。税・社会保険・設立維持費、融資条件、承継方法を個別に比較しましょう。

たとえば、個人と法人の税・費用を比較し、法人での購入資金の調達を検討する場合があります。節税額や融資の可否は、個別の試算と金融機関の審査によります。

この記事では、不動産投資の法人化について、税金・融資・相続のメリットと注意点、設立・維持費、検討する時期を整理します。

読み進めながら、ご自身の条件で比較する際の確認事項を整理してください。


不動産投資の法人化を検討する際の3つの確認点

不動産投資で法人化を検討する際は、税負担、物件購入の資金調達、将来の承継を分けて確認します。以下の3つの視点から、個人のまま保有する場合と比較しましょう。

① 所得と費用の条件をそろえて法人化を比較したい人

課税所得900万円は、全国共通の法人化の損益分岐点ではありません。個人の所得税は累進税率で、限界税率を所得全額に掛けた額がそのまま所得税額になるわけではありません。所得税と住民税の限界税率を、国税である法人税だけの税率と直接比較しても、法人化後の総負担は分かりません。

2023年当時の比較をする場合も、その年分の個人課税と該当する事業年度の法人課税を分けて確認します。No.5759の国税の法人税率は、法人区分、資本金、支配関係、所得金額、事業年度などにより異なります。給与所得と不動産所得を合算した個人の課税所得を、そのまま法人の利益へ移せるわけではありません。

法人地方税、役員報酬を受け取る個人側の税、社会保険、物件移転費用と維持費を含め、同じ収入・費用・期間で比較する必要があります。これらの前提がないため、課税所得1,200万円という情報だけでは法人化による節税額は算定できません。

出典:国税庁 令和5年分 所得税の税額表(PDF) / 国税庁 法人税の税率

② 追加購入の資金調達を検討している人

今後の物件購入を検討している場合は、法人名義での取得も選択肢になります。

法人の融資でも、物件収支、既存借入、法人の財務状況、代表者の状況や保証の要否などが審査されます。条件は金融機関と案件ごとに異なります。

たとえば、既存物件を個人で保有し、新規購入を法人で検討する場合があります。法人で申し込む場合も、収支計画と既存借入、代表者保証の要否を確認します。

追加購入が難しい場合は、借入状況と物件収支を整理し、法人での申込みも含めて金融機関に相談しましょう。

③ 将来的な相続・事業承継をスムーズに行いたい人

将来、ご家族へ不動産事業を引き継ぐ場合は、法人化を含む承継方法を比較できます。

個人所有の不動産を承継する際は、分割方法、評価、納税資金を確認する必要があります。
法人保有の場合、株式の承継を検討できます。ただし、非上場株式は評価・分割・議決権・納税資金の確認が必要で、贈与による相続税軽減は一律ではありません。

たとえば、家族への株式の生前贈与を検討する場合があります。税負担や議決権、他の相続人との調整は個別に確認します。

事業承継を考える場合は、個人所有と法人保有の費用や手続きを早めに比較しましょう。


不動産投資を法人化する際の5つの主な検討ポイント

法人化には税負担、融資、経費、承継などの検討事項があります。ここでは主な論点を順に確認します。

① 個人と法人の税負担を同じ条件で比較する

個人の所得税本税は速算表の税率と控除額で計算します。2023年分の通常の総合課税で、所得控除後の課税所得が1,500万円である例なら、15,000,000円×33%-1,536,000円=3,414,000円です。これは税額控除前の所得税本税であり、復興特別所得税・住民税等を含みません。

この金額だけから、個人の総税負担や法人化後の節税額は確定できません。法人側の課税所得、地方税、役員報酬の税務上の扱い、報酬を受け取る個人の所得控除・税額控除、社会保険料、移転・維持費などが必要です。個人の課税所得1,500万円から役員報酬800万円を引くだけでは、同じ条件の法人所得700万円という比較になりません。

この例から毎年の節税額を確定することはできません。条件をそろえた個別試算で判断してください。

出典:国税庁 令和5年分 所得税の税額表(PDF) / 国税庁 法人税の税率

② 法人での融資を検討する際の確認点

法人化だけで融資条件が改善するとは限りません。

金融機関は、事業計画、物件収支、返済能力、既存債務、法人の財務状況、代表者保証の要否などを個別に確認します。

たとえば、法人で新規物件の資金調達を相談する場合は、収支計画と返済計画を用意します。融資の可否や条件は金融機関の審査によります。

法人と個人のどちらで申し込むかは、物件と借入の条件を踏まえて比較します。

③ 役員給与・退職金・社宅等の税務上の条件

法人で支払う役員給与や社宅費用などは、項目ごとの税務上の要件を確認します。

役員給与は、定期同額給与・事前確定届出給与などの要件を満たす範囲で損金算入を検討できます。不相当に高額な部分などは損金になりません。受け取る役員個人の税・社会保険も含めて比較します。適正な役員退職金は支給・金額確定等の要件に従って損金算入を検討します。保険料は契約内容、受取人、解約返戻率等で損金・資産計上・給与課税の扱いが変わります。

主な項目と確認点は次のとおりです。

  • 役員給与: 支給方法・金額など、損金算入の要件を確認。
  • 役員退職金: 適正額、支給・金額確定の時期を確認。
  • 生命保険料: 契約内容等による損金・資産計上の区分を確認。
  • 社宅: 賃貸料相当額と貸与条件を確認。
  • 出張日当: 業務上の旅行に通常必要な範囲を確認。
  • 経営セーフティ共済: 加入資格と損金算入条件を確認。共済契約を解除した後2年以内に再加入した場合、その期間に支出する掛金には損金算入特例を適用できない。

社宅費用や税負担への影響は、社宅の形態、役員負担額、法人・個人双方の課税関係で変わります。個別条件で試算してください。

税負担は法人と役員個人の双方で、社会保険料や維持費も含めて比較します。

④ 株式承継を検討する際の注意点

法人の株式を承継する方法もありますが、その効果は個別の条件によります。

非上場株式の評価は、会社・株主の条件により異なります。贈与税・相続税、議決権、納税資金、物件移転費用を確認する必要があります。

たとえば、株式承継と個人所有物件を法人へ移す費用を比較する場合があります。裏付けを確認できない具体的金額・成果を前提にせず、評価と税負担を個別に試算します。

家族への承継は、個人所有と法人保有のそれぞれについて、評価・税・費用を比較して検討します。

⑤ 賃貸損失と売却損失、個人と法人の課税を分けて確認する

個人の通常の不動産貸付けによる損失は、原則として給与所得などの黒字と損益通算できます。ただし土地取得借入金の利子相当部分などは対象外で、国外中古建物や組合等にも制限があります。個人は不動産の赤字を給与と一切通算できない、という説明は正しくありません。

一方、個人の土地建物の譲渡損失は、原則として他の土地建物の譲渡所得と相殺した後に残っても給与所得等とは通算できません。一定のマイホームの例外を、投資用物件に当然に適用することはできません。

個人の土地建物の売却益は分離課税で、長期・短期の区分は譲渡年1月1日現在の所有期間が5年を超えるかで判定します。建物取得費は減価償却費相当額を差し引き、譲渡費用や特例も確認します。法人の売却益は個人のこの5年区分とは異なり、法人の所得計算に含めて、損金の要件を満たす費用等とともに計算します。法人税だけでなく地方税等も関係するため、法人なら一律に税負担が20%になるとはいえません。

取得から3年という情報や、修繕費が発生したという情報だけでは、個人と法人の税負担・売却手取りを比較できません。売却日・取得費・譲渡費用・法人所得等をそろえて検討してください。

出典:国税庁 不動産所得の損益通算 / 国税庁 土地建物の譲渡損失 / 国税庁 長期譲渡所得 / 国税庁 短期譲渡所得 / 国税庁 法人税の税率


【デメリット・注意点】設立前に必ず知っておきたい5つのこと

法人化には設立・維持費、社会保険、事務負担、物件移転時の税や費用があります。事前に確認しましょう。

① 設立・維持にかかる費用

法人の設立費用と維持費は、法人形態、自治体、依頼内容などで異なります。

設立費用は、定款認証や登記の要否、登録免許税、専門家への依頼内容を確認して見積もります。
法人住民税の均等割や会計・申告費用は、自治体、資本金、従業者数、依頼内容などで異なります。

年間の維持費は、個別の条件で見積もり、税負担とあわせて比較してください。

設立時と毎年の費用を見積もり、個人と法人を同じ期間・条件で比較しましょう。

② 社会保険への加入が義務になる

法人事業所で代表者を含む常時使用される人がいる場合、原則として健康保険・厚生年金保険の適用対象です。代表者の被保険者資格や報酬の実態は個別に確認します。

保険料は標準報酬月額・標準賞与額と適用料率等で計算し、原則として事業主と被保険者が負担します。標準報酬月額には上限があり、報酬に比例して無制限に増えるわけではありません。料率は保険者・地域・年度等で変わるため、現行の保険料額表で試算してください。

保険料は加入する保険者と対象年度の保険料額表を用い、役員報酬等の条件に基づいて試算します。

社会保険料は法人化後の資金計画に含めて確認しましょう。

③ 設立・運営の手間が格段に増える

法人を設立し、運営していくことは、個人事業主の確定申告とは比較にならないほど、事務的な手間と時間、そして専門的な知識が要求されます。

設立手続き自体が煩雑な上、設立後も大変です。法人は日々の取引を複式簿記で正確に記帳し、事業年度が終われば、2ヶ月以内に法人税の申告書を作成し、提出する必要があります。法人の会計・税務申告には専門的な判断が必要になる場合があります。万が一、申告内容に誤りがあれば、税務調査で追徴課税などの厳しいペナルティを受けるリスクもあります。必要に応じて税理士等の専門家への相談を検討してください。

たとえば、法人設立後は記帳・申告準備を早めに進める必要があります。

法人化するということは、あなたが「不動産投資家」から「会社の経営者」になることを意味します。経営者として、経理や税務といった管理業務の重要性を理解し、そのためのコストや手間を織り込んでおく必要があります。

④ 個人のお金を自由に使えなくなる

法人と代表者個人の資金は区別して管理する必要があります。

会社資金を私的に使うと、取引の実態に応じて役員貸付金や給与等の処理が必要になる場合があります。税務と金融機関への説明を個別に確認します。

たとえば、会社資金の私的な支出が生じた場合は、取引内容と返済の有無を記録し、適切な会計・税務処理を確認します。

法人の資金と個人の資金を区別し、支出の根拠を記録しましょう。

⑤ 個人所有物件の法人移転には税金とコストがかかる

すでに個人で所有している物件を、設立した新法人に移す際には、様々な税金やコストが発生し、多額の初期費用が必要になる場合があります。

個人所有物件を法人へ移す方法には売買や現物出資等があり、方法に応じた税・費用を確認します。

  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 譲渡所得税(個人側で利益が出た場合)
  • 司法書士報酬

法人側では不動産取得税、登録免許税等や購入資金を確認します。個人側の譲渡所得は時価と購入額の単純差では決まりません。

個人所有物件を法人へ移す場合は、方法・時価・取得費・減価償却・所有期間・譲渡費用により個人側の譲渡所得が変わります。法人側の税・費用も含め、移転前に資金と税負担を試算してください。新たに購入する物件から法人で取得する方法も比較できます。

既存物件の移転費用と税負担を試算し、移転するかどうかを判断しましょう。


【タイミングの見極め方】あなたの法人化、いつが最適?

法人化の時期は、税負担、維持費、融資条件、消費税の課税関係を同じ期間で比較して検討します。

① 所得額だけで決めず、総負担を比較する

課税所得800万~900万円を全国共通の法人化ラインにすることはできません。個人の限界税率と法人税だけを比べず、法人地方税、役員報酬を受け取る個人の税、社会保険、移転・維持費を同じ期間で比較します。前提が不足する段階では節税額を確定せず、法人化以外の方法も含めて検討します。

② 消費税の課税事業者になるタイミング

消費税の納税義務は、課税期間ごとの条件を確認します。

消費税の納税義務は、基準期間の課税売上高に加え、特定期間、資本金等による新設法人の特例、特定新規設立法人、インボイス登録、課税事業者選択などを課税期間ごとに確認します。新法人が設立後2期免税とは限らず、法人化だけで納税を繰り延べられるとはいえません。

店舗や駐車場などの課税売上がある場合は、対象取引と課税期間を確認してから法人化の時期を検討します。

③ 次の物件購入で融資条件を確認する時

追加融資が難しい場合は、借入状況と物件収支を整理し、法人での申込みも含めて金融機関に条件を確認します。

金融機関の審査基準や代表者保証の扱いは、金融機関と案件によって異なります。法人化だけで融資可否や条件は決まりません。

追加購入を検討する際は、法人と個人のそれぞれで必要な資金と融資条件を確認しましょう。

自分のタイミングはいつ?専門家に無料相談してみよう!

最適な時期は個別の条件で異なります。税負担・社会保険・資金計画について専門家に相談しましょう。

→ 無料相談できる税理士を探す


【実践編】不動産投資会社を設立する具体的な4ステップ

法人設立を検討する場合に、手続きの全体像を確認しておきましょう。ここからは、実際に不動産投資会社を設立するための具体的な手順を、4つのステップに分けて解説します。専門的な部分も多いですが、全体の流れを把握しておくことで、専門家との相談もスムーズに進みます。

STEP1:会社の基本事項(概要)を決定する

法人設立の第一歩は、あなたの会社の「憲法」とも言える基本ルールを決めることです。最低限、以下の項目を決めておきましょう。

  • 会社の種類: 株式会社 or 合同会社
  • 商号(会社名): 会社の名前
  • 本店所在地: 会社の住所
  • 事業目的: 「不動産の賃貸、売買、管理」など将来行う可能性のある事業を記載
  • 資本金: 事業計画や必要資金に応じて決める
  • 役員(取締役): 経営を行う人(1人でも可)
  • 事業年度(決算期): 会社の会計期間

これらの基本事項は、会社の骨格です。特に事業目的や役員構成は、将来の税務・融資戦略に直結するため、この段階で税理士に相談することをお勧めします。

STEP2:定款の作成・認証

STEP1で決めた基本事項を元に、会社のルールブックである「定款(ていかん)」を作成します。株式会社の場合は、作成した定款を公証役場で認証してもらう必要があります(合同会社は不要)。

定款は一度作ると変更が大変です。収入印紙代4万円が不要になる「電子定款」の利用が主流ですが、専門知識が必要なため、司法書士に作成を依頼するのが一般的です。

STEP3:資本金の払込みと設立登記

定款認証が完了したら、発起人が決定した資本金を個人の銀行口座に払い込み、いよいよ最終ステップである法務局への「設立登記申請」を行います。この登記申請が受理された日が、あなたの会社の設立日となります。

登記申請には多くの専門的な書類が必要です。書類の不備は時間のロスに直結するため、ここも手続きに不明点がある場合は、司法書士等の専門家への相談も検討できます。

STEP4:設立後の各種届出

登記が完了したら、それで終わりではありません。税務署や都道府県、市町村、年金事務所など、各関係官庁へ「会社ができました」という届出を速やかに行う必要があります。

【主な届出先と書類】

  • 税務署: 法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書など
  • 都道府県・市町村: 法人設立届出書
  • 年金事務所: 健康保険・厚生年金保険 新規適用届など

これらの届出を怠ると、税制上の特典が受けられなくなるなどの不利益が生じます。通常、税務関係は顧問税理士が、社会保険関係は社会保険労務士が代行してくれます。


まとめ:法人化のメリットと注意点を条件ごとに確認

不動産投資の法人化では、税金、社会保険、融資、相続、物件移転を同じ条件で比較する必要があります。最後に主な確認点を整理します。

メリット・デメリットの最終チェックリスト

【法人化のメリット・チェックリスト】

  • [ ] 税負担の比較:所得額だけで決めず、個人と法人・役員個人の税や社会保険、移転・維持費を同じ条件で比較できているか?
  • [ ] 融資条件の確認: 物件収支・既存借入・代表者保証の要否を金融機関に確認したか?
  • [ ] 税務上の条件: 役員給与・退職金等の損金算入要件と個人側の税を確認したか?
  • [ ] 相続・承継: 非上場株式の評価、分割、議決権、納税資金を確認したか?
  • [ ] 売却の比較:個人の譲渡年1月1日の所有期間と、法人の所得計算を分け、売却費用・残債・税を含めた手取りを確認できているか?

【法人化のデメリット・チェックリスト】

  • [ ] コスト負担: 設立・維持費を個別に見積もったか?
  • [ ] 社会保険料: 対象年度の料率と標準報酬で試算したか?
  • [ ] 事務的な手間: 複雑な経理や決算の手間を、専門家に依頼するコストを含めて受け入れられるか?
  • [ ] 資金の制約: 会社のお金と個人のお金を明確に分け、自由にお金を使えなくなることを理解しているか?
  • [ ] 物件移転: 既存物件を移す方法と税・費用を比較したか?

このチェックリストをもとに、個別条件の試算と確認を進めてください。

最終結論:自分だけで判断せず、まずは専門家に相談しよう

この記事を通して、法人化に関する多くの知識を得られたことと思います。しかし、最も重要なことを最後にお伝えします。それは、「法人化は個別条件で結果が異なるため、必要に応じて税理士等の専門家に相談しながら判断しましょう。」ということです。

法人化は、あなたの資産状況、家族構成、将来の目標によって、その最適解が全く異なります。インターネットの情報はあくまで一般的であり、あなただけの「オーダーメイドの処方箋」ではありません。

では、どうすればいいのか?

答えはシンプルです。「不動産投資に精通した税理士に相談し、あなたの状況に合わせた具体的なシミュレーションをしてもらうこと」です。

税理士等に相談する場合は、申告書や物件・借入の資料を用意し、前提をそろえて試算を依頼しましょう。

あなたの不動産投資、次のステージへ。

法人化は、不動産事業の運営方法を検討する際の選択肢の一つです。

→ 【無料】不動産に強い税理士を探して相談する

この記事が、あなたがその第一歩を踏み出すきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。あなたの不動産事業の成功を、心から応援しています。

pagetop
AIエージェント